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ナイアガラ [日常の話題]

ナイアガラ.jpg

先日のことである。
外出した帰りに、小さなスーパーで野菜を買った。
時間がちょうど5時過ぎで、お店が一番混む時間、
レジの前に長い列ができていた。
わたしは、70年代の体格のいい男性の後ろに並んだ。
すると、その男性が振り返って話しかけてきた。
「混んでますねえ」
くったくのない笑顔で、人柄のよさそうな男性である。
表情も体つきも堂々としていて品がある。
はっきりいって、わたし好みの男性である。


「まあ、一番混む時間ですから、仕方がありませんね」
と適当に応えた。
それから、一呼吸おいてまた男性が振り返った。
両腕でささげるようにして持っている箱を目の前に差し出して、
「これは、山形のぶどうでナイアガラというんです」
めんくらったわたしが無反応なので、男性は繰り返した。
「これは、山形のぶどうでナイアガラというんです。
ナイアガラってかわった名前でしょう」


ナイアガラといえば、滝しか思い浮かばないわたし。
「そうですねえ」
「ぼくはこれが大好物でねえ、香りがよくておいしいんです。
匂いをかいでごらんなさい」
有無を言わせぬ口調なので、ふだんこういうことはしないのだが、
箱に顔を近づけて匂いをかいだ。
熟した果実によくむらがっている小さな虫が鼻先をとびまわる。
この虫が気になって匂いをかぎたくなかったのだが。


「ねっ、いい匂いでしょう」
男性は満面の笑みを浮かべた。
「確かに、甘いいいかおりがしますねえ」
といわざるを得ない状況なのでそういったが、
いい匂いではあった。
「山形のぶどうで、ぼくはこれは大好物なんです。
それが、ひと箱たったの500円です。安いでしょう」
「それは、安いですねえ」
「そうなんです」
と男性は、またうれしそうな笑顔になった。


列はじりじりと進む、
移動のたびに男性は、さりげなくこちらに気を使う。
レジでは、自分のは持っているから、
台の上にあなたのカゴを乗せなさいと促す。
たいしたものが入っていないカゴなのだが、
ここで遠慮していると余計に気を使いそうなので、
恐れ入ります、と置かしてもらった。


男性は、レジで自分の会計を済ませると、
「では、お先に失礼いたします」
と軽く一礼して立ち去った。
立ち居振る舞いが、この年代の人がよく口にする、
洋行帰りの紳士風なのである。
時と場所が違っていたら、グラっときていたに違いない。
久しぶりにステキで爽やかな男性に出会ったのであった。


体格がよかったし、顔つきなども山形県によくみるタイプで、
おそらく山形出身の方なのだろう、
お国自慢も入っていたに違いない。


昨日、同じお店に寄ったら、このぶどうがひと箱500円で
売られていた。箱にも山形県のぶどう、ナイアガラとあった。
梨を買う予定だったのに、ナイアガラを買ってしまった。


洗って冷蔵庫にしまったら、冷蔵庫中がナイアガラになってしまった。
帰宅した青君が冷蔵庫を開けて、びっくり仰天していた。
これだけ、ぜんぶで500円といったら、さらに驚いていた。
先日、すてきな男性にあった話はしていて、
そのときのぶどうがこれ、と教えたが、
青君はそんな話のことは、とっくに忘れていたのだった。
最初から聞いてなかったに違いない。


ネットで調べたら、
原産国はアメリカで白ワインにも使われているとあった。
それで思い出したのだが、このかおりは、
カリフォルニアワインの匂いだった。
カリフォルニアワインがおいしいのも、ナイアガラのせいだったのか。
マスカットの匂いにも似ているが、それをもうちょっと甘くしたかおり。
その甘さ、ベタベタした感じでなく、品のある大人の甘さとでもいおうか。
テーブルにナイアガラを出しておくと、部屋中がいいかおりに包まれる。


種があるのだが、種をだそうとすると、
すっぱくなるので、このぶどうを食べるときは、
種をださずにのみこむのが一番らしい。

このかおり、ブログでお伝えできないのが残念。





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お茶屋

記事を拝見してたら、
なんだかとっても食べたくなってきました><!
by お茶屋 (2008-09-12 17:06) 

ぴーすけ君

キレイな緑色だわ~。
by ぴーすけ君 (2008-09-12 20:24) 

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